原産国効果の世代間の違いに注目した研究は行われていないようである。
ただし、研究として世代間で違いがあったという結果は出ている。
Schooler(1971)によれば、35歳より若い層と50歳以上の層で違いが出ている。
その違いは、 高齢層のほうがより低く他国の原産国効果が働いているというもの。
実際に日本の消費者へアンケートを実施した結果として、Schoolerと同様に世代の間で有意差が得られた。
20代前後、50代前後、70代での3世代に渡るアンケートでその結果が得られたわけである。
結果としては、高齢層のほうがより低く他国の原産国効果が働いているというものだった。
複数製品において調査を行ったがいずれもほぼ同様の結果が得られた。
このことから、高齢層ほど原産国効果がマイナスに働くという事が言える。
なぜこのような結果になったのか。
その考察が求められる。
調査前の仮説では、高齢層ほど原産国効果がプラスに働くものと考えられた。
何故ならば、かつては海外製品は「舶来品」とも呼べれ、高品質、高価格のイメージがあったはずだからである。
しかし調査の結果はその仮説を裏切るものだった。
原産国効果を与える要因として、原産国へのステレオタイプ的イメージが存在する必要がある。
例えば全く他国への情報を持たない乳幼児などに評価をしてもらうことが可能だとしても、そこに差は現れないだろう。
また仮に宇宙人が存在するとして、彼らに原産国効果が働くかどうかを考えても、働くとは到底考えられない。
そこには原産国に対するイメージが存在していないからである。
では原産国に対するイメージを形成するものは何なのか?
そもそもイメージを形成する要因は何なのか?
イメージの形成に影響するものとして、経験が考えられる。
例えば海外旅行をした時に、旅行先でとてもいい経験をした場合、その国に対するイメージはプラスとなり、結果としてその国の原産国効果もプラスに働きうるのではないだろうか。
同様に悪い経験をした場合は、マイナスに働くことと予想できる。
つまり世代間で原産国効果に違いがあるのは、そもそも経験が違うからだと言える。
しかし世代間ではっきりと違いが現れたということは、その経験が局所的な経験ではなく、世代間で広く経験しているものではならない。
そうでなければ、世代間ではっきりと差がつくものではないからだ。
思いつくものとしては、まずは戦争経験があげられる。
従軍経験である。
第二次大戦時に10歳前後だった層を考えると、現代では80歳前後となる。
これは調査対象に当たる70代の世代に当てはまる。
つまり戦争相手国へのイメージは悪いものとなるのではないか。
しかし、枢軸国側であるドイツ、イタリアに関するイメージも低い結果だったのである。
一概に戦争経験が影響しているとは言えないのではないか。
続いて想像しうるのは日本の成長を経験したかどうかである。
日本は大戦後、高度経済成長を経験し、大きな経済成長を遂げた。
世代間で、その経済成長の経験年数や成長度合いも異なってくる。
経済成長の経験年数と、原産国効果のマイナス度合いは相関関係にあるように考えられる。
また近年顕著な例として、インターネットの進展がある。
従来の4大マスメディアに加え、近年ではインターネットの消費者への影響は強くなっている。
総務省の通信利用動向調査によると、インターネット利用率は60代以上になると急激に減少している。
すなわち若い世代はインターネットによる情報を経験しているが、高齢層はその情報を経験していない。
テレビ視聴に関しては、どの世代は高い視聴率を誇っている(90%以上)。
ただし新聞に関しては、若年層は高齢層に比べて圧倒的に読んでいないことがわかる。
高齢層ほど原産国効果がマイナスに働いたことを鑑みると、インターネットでは他国に対して比較的プラスの情報が、新聞では他国に対して比較的マイナスの情報が発信されているのではないだろうか。
もしくはインターネットではより自由度の高い情報取得が可能であり、新聞に比べて他国の情報をより広範に取得することができる。
他国の情報に触れることで、原産国効果もプラスないし、無影響にシフトするのではないだろうか。
これらのことから考えると、原産国効果がマイナスに働いた高齢層の背景として2点のことが挙げられる。
1つ目は自国の経済成長を経験していること。
2つ目はインターネットを利用していないこと。
上述の2つは事実として存在しているが、その存在がいかようにして影響を与えたのかを更に考察する必要が残っている。
原産国効果の世代間のギャップ
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